一生の担任エッセイ
Vol.02

導かれた出会い

ある晴れたうららかな春の朝、教室に大学を卒業した生徒さんが来てくれました。
私と同じ誕生日の、かわいい2頭の犬を連れて。

教室の隅のこの場所は、小学4年生から中3までの6年間、2人で過ごした場所。
彼女の中にある何かがきっかけで学校へ行くことをやめた彼女と2人きりの教室を、6年間。
高校を卒業した後美術の道に進んだ彼女が、私に描いてくれた作品の貴重な習作も見せていただきました。

当時の彼女は、学校と言う場所には断固として迎合しないがんこちゃん。
私は、理由を聞くことはありませんでした。
だって目の前にいるあなたが、私にとってはあなたそのものだったから。
当時はまだ、学校に行くのが正義という風潮が強かったのだけど、同調圧力に負けないあなたが私は大好きで、それでいいんだと思っていたよ。
どんな形であっても学ぶことをやめないあなたを、尊敬していたんだもの。

当時は(今もですけれど)小さな小さな教室で、今は1人教室をもつことはできなくなりましたけどね。
あなたはその生き方で私を「先生」にしてくれたし、私もあなたを信じて守り、育み社会に送り出せた経験から、先生という歴史が始まった気がします。
人生に導かれた出会いだったと思います。
ありがとう。

選ばれて大学の職員となったあなたに、心からの祝福とエールを送ります。
ありがとうだなんて。
お礼を言うのは、本当にこちらです。

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